Viaggio Vol.6 Athens, GREECE [ギリシャ、アテネ]

Viaggio Vol.6 Athens, GREECE [ギリシャ、アテネ]

 

前回の旅を終え、ヨーロッパの歴史の奥深さに心を打たれた僕は、旅の目的地を選ぶ照準を歴史、年月、歳月に合わせ、次なる場所を絞り出した。オリンピック、パルテノン神殿、西洋文明発祥の地、地中海に浮かぶ美しい島々を数多く所有する古代ギリシャ共和国。東京都の60倍の国土面積に東京の人口にも満たない1000万人くらいの人々が暮らしている。ヨーロッパのルーツを辿り、サーフカルチャーとは無縁である地中海の小国へ、気づけば僕は降り立っていた。

首都アテネの空港から列車に乗り市街地を目指した。波に乗ることができるかどうかは一切確証は無かったが、かさばるサーフボードとウェットスーツを抱えこの国にやってきた。地中海とはいえ海はある、ということは波も立つ可能性がある。わずかな期待を抱き、大きな荷物を抱き、たいそうがっしりとした列車に乗り込んだ。車窓から眺める田園風景はとてものどかなものだった。国は違えどその営みは変わらず、畑を耕し、作物を育て、その恵みをいただくといったシンプルな流れが僕の心を落ち着かせてくれた。数十分ほど揺られると建物の数は一気に増え、アテネ中心部シンタグマ駅に着いた。

ギリシャでのサーフィン

駅の構内には数々の出土品が展示されており、この国の歴史の深さを改めて感じさせられた。ここから地下鉄に乗り換え、さらに奥深くの中心部モナスティラキ駅まで、人混みの中へサーフボードを担ぎ潜り込んでいった。アテネで暮らすローカルたちも、同様にサーフボードを担ぐ僕を、訝しげに見つめている。ミラノの人々とは違い気軽に声を掛けてくる訳では無かったが。。。

アテネでのサーフィン

わずか2駅で目的の場所に着いた。駅構外に出るとそこにはえもいわれぬ絶景が広がっていた。丘の上にそびえ立つアテナイのアクロポリス、パルテノン神殿を中心に数多くの建築物が建てられ神々が祀られている。紀元前438年に建てられたというが、その時代にこんな巨大な神殿を作る技術があっただなんて全く信じられない。高さ10メートル幅2メートルの石柱が46本、その上に装飾が施された屋根がどっしりとのっかっていた。

今までに幾度か補修されてはいるが、技術の無い紀元前にいったいどうやってこんなものが作れたのだろうか。。。しばらく自分の脳力のすべてを駆使し、思いを巡らせてはみたが、完全に理解不可能であった。「深い」この言葉に繋がる何かを持ち合わせた物事に感銘を受ける。そんな年齢になってしまった僕は、この国が非常に心地よく感じられた。

折しも財政危機が騒がれていたギリシャであったが、国内に入るとその危機はさほどではなく、変わらぬ日常を垣間見ることができた。ホテルから市場へと向かう。色とりどりの大地の恵みが、マーケットの表情を豊かにさせる。種類の豊富なオリーブが、ここはヨーロッパだと感じさせてくれる。日本とは違い肉も魚も豪快に売られている。行き交う人々の活気に煽られ、僕のテンションは上がり始めた。

ギリシャへのサーフトリップ

テイスティングで気に入ったオリーブを買い込み、次はサーフパトロールへと向かった。と言っても波がありそうな海ではなく、市内のショップへの調査だ。サーフカルチャーの発達が乏しいこの国では、サーファーの情報もポイントの情報も、あまりインターネットでは見つけられなかった。事前に得た唯一の情報としては、市街にサーフショップが一件あるだけだった。藁にもすがる思いで住所を辿り、とぼとぼ歩いていくとそこはもぬけの殻であった。古びたつぶれた商店があり、サーフショップらしき形跡もない。

途方にくれシンタグマ広場でたたずんでいると、数名のスケーターがセッションを始めた。「これは有力な情報が得られるかも!」と思い声を掛けようとチャンスをうかがっていた。間合いが詰まらないまま時間は流れ、とうとう日が暮れてきた。辺りが暗くなり、互いを認識しづらくなると何故だか大胆な行動に出ることができた。リーダー格らしき人物に歩み寄り、サーフィンに関していろいろ質問を投げかけてみた。答えは「ノー」周りの仲間にも聞いてくれているようだが、プラスになる情報は一切得られなかった。

翌日、手段を変え海岸線をバスでパトロールしてみた。紺碧の海が広がる地中海。その美しさは一級品でヨーロピアンがこぞって訪れるリゾート地。プライベートビーチも多く、アクセスは難航した。数日パトロールを繰り返し、乗れそうな波が見つけられた時には、滞在最終日を迎えていた。午後のフライトの時刻までにミッションを完了しなければ、ギリシャでのサーフィンは皆無となる。足跡を残したく始発の地下鉄でまずは終着駅に着いた。外に出るとまだ吐く息は白く寒さは厳しかった。バスの乗り換え時間まではローカルたちと同様に近くのカフェで朝食を済ませておいた。そうローカルのゲッティングアウトに習いピークを目指していった。乗り込んだバスから見えてくる景色、紺碧の穏やかな海の広がりに、少しずつ白波が混じり始めた。それはしだいに大きくなり、サーファーならわかる乗れる波になってきていた。サーフポイントとしての確証もないままその波だけを見てバスを降りた。ビーチに歩み寄ると確かにできそう、すぐさまウェットに着替えパドルアウトの準備を開始した。

アテネのサーフトリップ

小ぶりな波であったが感慨深いものがあった。これまでの道のり、この国の歴史、今までの自身の経験、すべてが重なりその色は凄味のある艶を放っていた。振り返ると目の前にそびえ立つ豪邸、そこには本物のサーファーが暮らしていると後から話で聞いた。

 

Written by Hideki Jumbo Sakakibara
Instagram : @jumbomax69
Tue, 15 January, 2019