From Europe Vol.8 Porto × La Paz

From Europe Vol.8 Porto × La Paz

 

「ポルトはロマンチックな場所に思える」。

その言葉を耳にしたのはリスボンの中心から少し外れた場所にあるレストランで。レストランというより食堂のような雰囲気の店内で、リスボンサーファーにポルトの事を何となしに聞いてみた。すると彼はフットボールのテレビ中継を観ながら、静かにそう言った。

ポルト 港湾都市

 ポルトとは、ポルトガル北部に位置する港湾都市。首都リスボンに次ぐ、ポルトガル第二の都市だが、ポルトガルの国名はポルトに由来するなど国内で古い歴史を誇る都市である。18世紀前後に建築された建物が並ぶ旧市街地は1996年にユネスコ世界遺産に登録された。坂の多い石畳を歩けば、街の至るところに古い建物とアズレージョの絵を目にする。古い建物だけなら正直ヨーロッパではそこまで珍しくないかもしれない。しかしこのアズレージョがあると、ポルトガルであることを感じさせられる。

 古いことわざに「リスボンは享楽、コインブラは歌い、プラガは祈り、そしてポルトは働く」(‘Lisbonne s’amuse, Coimbra chante, Braga prie et Porto travaille’の意訳というポルトガル各都市の性格を言ったものがある。それにならえばポルトは労働の街になるが、今のポルトからは少し想像しがたい。古いだけの建物は文化的なアトリエに再開発され、多かった空き物件(2011年の時点で18.7%の空き家率! ちなみにポルトガル全体で12.5%、リスボンは15.5%の数値だった)はデザイナーズホテルや、小さな作家たちによるプロダクトを扱うコンセプトストア、それにベジタリアンレストランなどへ転用。他ヨーロッパ諸国に比べポルトガル自体物価が安く、日照時間も多い。それにヨーロッパの各都市からポルトまで直行便で飛べ、ロンドンからは2時間半、パリから2時間、マドリッドからは1時間で行ける。週末旅行の感覚である。現に2017年にはWorld Travel Awards「最優秀デスティネーションinヨーロッパ」なるものにも選ばれている。ここ数年で行政の助けもありスピードを持って生まれ変わっているポルトは今、歴史と新しい感性が同居する街として注目されている。特にクリエイターを中心とした活気があり、文化の香りがする。

一番高い場所に建てられたのがポルト大聖堂。そこから見渡すように街が広がっている。

ポルトガル 建物

2018年の今年、FCポルトが5年ぶりポルトガルリーグで優勝! この部屋からはそれを道行く人にも知らせるかのように、ポルトガル音楽を部屋から流していた。

 物作りに携わる人たちを虜にしているポルトだが、実は海も近い。中心地から一番近いMatoshino(マトジーニョ)へは車で15分ほどで行ける。またワインで有名なドゥーロ川を渡って南下すれば、海岸線は10km以上にも及び、それぞれのビーチの名前がついている。ヨーロピアンサーファーがポルトガルへサーフトリップに行く場合、多くは南部へ直行、もしくはリスボンを通って南部かリスボン近辺のサーフポイントへ行くパターンが多く、同じヨーロピアンでもサーファーになるとポルトを知らない事も多い。しかしポルトは歴史的な街並みに、風光明媚なドゥーロ川沿い、そして海が小さな範囲で揃う、勝手よく楽しめる街である。例えば朝サーフィンをし(タイドでサーフ可能か否か決まるが)、昼に中心地へ戻り歴史地区の散策、午後はワイナリー訪問、夜が遅いのでその前に小さなショップやアートスペースを巡り、陽が落ちたら名産のワインを嗜むながら控えめなライトアップのもと魚介料理に舌鼓を打つ。ポルトは少しの移動で場面が大きく切り替わる。少ない滞在時間で存分に楽しめるポテンシャルは大きく、特に時間の貴重さを知る大人サーファーにはオススメのサーフシティといえる。

ポルトガル サーフスポット

ポルトを訪れた11月中旬はすでに冬のうねりが届き、風との相性で海は荒れ模様。ドゥーロ川の河口を挟み、北側がMatosinho 、南側がEspinhoとなる。

 そんなポルトで2012年に産声をあげたのが、EuroSurfStyle内でも取り扱いのあるブランド「La Paz」だ。お店はドゥーロ川から1本入った細い石畳の雰囲気ある通りに構えられ、店内の窓からはドゥーロ川と、川を挟んだ向かい側、ワイナリーが立ち並ぶヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアの様子を眺めることができる。夜になればルイス一世橋のライトアップに始まり、ドゥーロ川沿い一体はオレンジの光に包まれる。雰囲気はより深まり、何かストーリーが生まれるハプニングに見舞われてもおかしくない。リスボンサーファーはそれをロマンチックと形容しているのかもしれない。たまらない空気が醸し出されている場所にあることや、店の佇まいからすでにスタイルを感じられる「La Paz」。そこで今回、ポルトの街や、洋服作り、そしてサーフィンについてまでと「La Paz」に話を聞いてみた。

La Paz サーフ

レストランやお土産物がまだ多いエリアにあるLa Pazはその佇まいから異彩を放っている。通行人が思わずそれに魅かれ、足をとめ店内の様子を探る姿を何度か見た。

どうしてブランドの発祥地にポルトを選んだのでしょうか?

「ポルトは自分たちの街。そこに誇りを持っている。私たちはここで生まれ育った。街はちょうどいい大きさで海までの距離がまた、素晴らしいほどにちょうどいい。海は自然と私たちの生活の一部。もちろん洋服作りのインスピレーションの源でもある」

ここ数年でポルトの街が変わったと聞きますが、変わったところ、そして変わらないところは何でしょうか?

「確かにここ数年で街の様子はかなり変わった。年々観光客は増え、街はよりオープンに、そしてコスモポリタンになっている。文化も育っている。ポルトで味わえるグルメが人を魅了し続けている部分もあるだろう。ポルトは歴史的建造物とストリートカルチャーがうまくミックスされている。そして移動が簡単。ダウンタウンからビーチまでは15分、もしくはそれぐらいでアクセスできる。変わらないのは人。ここにいる人はみんな誠実。どんな人にも親切で、ハッピーな人たちとして知られているよ」

サーファーにとってもポルトは魅力的な街だとローカル視点でも思えますか?

「もちろん。ここには10−15kmの長い海岸線があり、いわばビーチブレイクの宝庫。そのときのコンディションに合わせて場所を選ぶことができる。選択肢の多さは自慢のひとつ。水温は常に冷たいけどね」

—La Pazについてうかがいます。お店でアイテムを手にしたとき、質のよい素材と丁寧な織り、そのクオリティの高さに驚きを覚えました。

「私たちのメインインスピレーションは大西洋、そこにいる人々やトラディション。だから根底にある心がけは快適で、長く持てるプロダクト作り。お客様もトレンドを追う人より自分のスタイルを持っている人に支持されることが多いです」

—“The sea is our Soul”Webサイトにありますが、このSeaは特定の海を指しているのでしょうか?

「このフレーズはちょっとポエムでもある。私たちは海の住人であって、海は常に私たちの内側に存在する。それでいて還る場所は海。そしてまた海から始まる。私たちの魂の中には海がある」

サーフィンについてうかがいます。いつもどこで入ってますか?

Espinho(エスピーニョ)周辺。ポルトの中心地から15km南に下ったビーチ」

頻度はだいたいどのくらいですか?

「それは状況によりけりだけど、春と夏はほぼ毎日サーフィンできる。朝早くに行ったり、仕事が終わったあとに行ったり。夜の10時くらいでもサーフィンします。でも秋と冬は波のサイズが大きくて、これまた変化が激しい。平均すれば週2回は行っているかな? 仕事があり、生活があり、サーフィンに行く。そしてそれが仕事に活きる。ポルトで生まれ育ったことに、誇りを感じずにはいられないよ」

ポルト La Paz

(答えてくれた人)

名前:Jose

ホームブレイク:Praia dos Pescadores (Espinho)。英語でフィッシャーマンの海、という意味のビーチ

愛用サーフボード:Yerxa 5’8” ツインフィン、フィッシュモデル。この板に13年間乗り続けている。今でも、そしてこれからもこの板は乗り続けるだろう

海上がりに食べたいもの:寒い日は温かい魚のスープ、夏は新鮮な魚をグリルしたもの。どちらもドゥーロのおいしい白ワインと合わせて

Written by Michiko Nagashima
Fri, 14 December, 2018