Keep paddling Vol.5 ありがとう

Keep paddling Vol.5 ありがとう

 

これまであまり経験はなかったが、今回の旅では、「飛行機の遅延」にかなり苦しめられた。
ひとつの遅延でその後の全てのフライトスケジュールがいとも簡単に崩れる。
それによって失った機会もお金もたくさんあった。
失敗と言えるツラいできごともあった。
しかしながら、その遅延のおかげで、予期せぬ貴重な経験もたくさんあった。

物は考えようである。

例えば、1時間差でトランジットに失敗し、
丸1日監視付きで軟禁?されたモスクワでの滞在。

KGBの名残なのか、プーチン圧政の賜物なのか、社会主義の現実なのか。
彼らは決して笑わないし、上から命令されたことを忠実に頑なに遂行する。

裏を返せば、それ以外の余白が全くない。尊敬の念すら覚えた。
おそらく「融通」「臨機応変」という単語は、この国にはないのであろう。

ヨーロッパの風景

しかし、それを打ち砕いたひとつの言葉があった。

寝不足や狂った予定にかなりいら立つ我々トランジット難民。
それにビクともせず、表情を一切変えないミルコ・クロコップ(クロアチアではるが)のようなセキュリティーと、トーニャハーディング(アメリカではあるが)似のホテルマン。

そのピリピリした空気を少しでも和ませようと、
僕が放った言葉の矢は意外にもロシア組の心を捉えた。
(今思えば彼らだって予定外の深夜仕事に、疲れ、僕ら以上にいら立っていたのだ)

ロシア語:спасибо(スパシーバ)=ありがとう

彼らは初めて、ニコッと、ほんとに少しだけではあるが、笑ってくれた。
微笑という言葉、そのままに。

振り返れば、この旅の中で、僕が言い続けていたことがあった。
必ず各国の言葉ひとつは覚えてやろう、そのために繰り返し使おう、と。

それは「ありがとう」
でもそれはこんにちはでもさよならでもなく、「ありがとう」。
大変なときこそ「ありがとう」。

有り難う。
そもそも「あることがむずかしい」。
だから感謝する。

半歩下がって相手を敬う、よい日本語。
とても日本人らしくて好きな言葉だ。

「おかげさまで」も自ら半歩下がって相手や御縁へ感謝する言葉。
自分の手柄ではなく、相手あってこそ。

Hawaii : Mahalo(マハロ)
France : Merci(メルシー)
Spain : Gracias(グラシアス)
Basque : Eskerrik asko(エスケリックアスコ)
Greece : Eυχαριστώ(エフハリストー)

各国の「ありがとう」も何となく音がいい。
そして、わりと言いやすい。
(各国の方からしても「アリガト」は圧倒的に言いやすいらしい。認知度の高さにも改めてビックリ。「どういたしまして」「こんにちは」は難しいようだ)

感謝されて嫌な気になる人はそうそういないし、
言う方も言われた方も何だかほっこり温かい気持ちになる。

感謝がつながって、それが輪になって、また新しい関係性が生まれて。

ヨーロッパのサーフスポット

ポジティブな空気をつくる言葉。

僕はこれからも「ありがとう」を続けたい。

Keep paddling,

 

Written by Syunsuke Kimura
Thu, 21 December, 2017