Vol.5 Firmamento, La Barceloneta, Spain

Vol.5 Firmamento, La Barceloneta, Spain

スペイン・バルセロナ。

マドリードの次に多くの人口を擁するスペイン第二の都市。バルセロナといえばサグラダ・ファミリアを代表とするガウディなど建築美を堪能できたり、サッカー好きからすればFCバルセロナは外せないだろう。観光の魅力に溢れた都市なのは世界的にも有名だ。

実際に行ってみるとよくわかるが、地中海に面しているバルセロナは海だけでなく山が近い。幹線道路上には多くの木が植えられ、都市でありながら自然も身近に感じることができる。街は坂が多く「迷ったら坂の上が山、下が海と思え」とは最初にこの地を訪ねたときにもらった現地人によるアドバイス。その通りに坂をくだっていくと海に突き当たる。そこはエリア名でいうとLa Barceloneta(ラ・バルセロネータ)。

湾になったところは港となり、それ以外の付近一帯は白砂のビーチが広がる。ビーチ沿いは車道と十分な広さの歩道が整備され、ところどころパームツリーも景観に映り込む。地中海の風を感じながら自転車やスケートボード、ランニングを楽しむ人たちが多い。その姿は見ている側からも爽快で、遺産のあるエリアとは違った、しかし絵になる場所。

少し高い建物からLa Barcelonetaの海岸線を見渡してみる。乾燥した空気が織りなす、原色の水色に藍を少し足したような色の空が広がり、太陽光はジリジリと音がするように強い。それが水面と反射し、上からも下からもと熱量が高い。手入れされた南国。まるで太平洋に浮かぶ、ある島のようにも思える。

しかしそんな錯覚も一瞬ですぐ違いに気づく。整備された道の1本裏に視線を動かせば雰囲気はガラリと変貌。古いアパートが隙間なく立ち並び、アパートとアパートが向かい合わせになった細い道は廊下のよう。少ない日光を奪い合うように、もしくは日光が届くのではないかと信じ込みたいかのように、窓からは洗濯物が干されている。

バロセロナの生活感

 

光と影、楽しむ余裕とたくましい生活感、観光とローカリズム…。La Barcelonetaはその小さな範囲の中で、色々な二面性を持つビーチエリアなのである。

その二面性のコントラストが強過ぎて、本題に入るまでが長くなってしまったが、本サイトEuroSurfStyleで扱われているブランド、Firmamento(フィルマメント)はそのLa Barcelonetaで生み出されている。

ブランドが誕生したのは2013年。バルセロナローカルであるアントンとマークの2人によって始められた。彼らはそれ以前に広告代理業を起こしているなどユニークなキャリアを持っている。

「2010年に代理店業のオフィスをLa Barcelonetaに移転したのは仕事だけの毎日にサーフィンを組み入れたかったから。地中海は波があまり立たない。立つときは限られている。だから余計にそのチャンスを取りこぼしたくなかった。移転して正解。たまりがちだったサーフィンへのフラストレーションは解消され、それに加えて人生への意欲が増した。それは自分たちにとってはサーフィンとより関わるという事で、それが洋服ブランドを始めることに至らせた。そのブランドがFirmamento」。

サーフブランド、フィルマメント
フィルマメントについて

 

2人が最初に始めた広告代理業の名前がFirma(※スペイン語で「署名」の意味)といい、Firmamento(※「晴れた夜空」の意味)という名前はそこから来ている。

Firmamentoについて、オーナーの1人であるマークに質問を投げかけてみた。
—ブランドのコンセプト、服作りをする意図は何ですか?
「私たちの主な目的はまず自分自身に正直であること。それは実際に大したことではありません。
Firmamentoの服作りで大切にしていることは、様々なジャンルとLa Barcelonetaのサーフシーンを結びつけ、ブランド独自のアイテムを作り続けることです。私たちはチームで仕事したり、違うジャンルのプロやメーカーとコラボレーションするのが好きです。新鮮なアイデアを形にする。
生産はバルセロナでの現地生産にこだわりを持っています。それには2つの理由があります。第一にサスティナブルな物作りをしたい。第二に私たちはFirmamentoに携わる人々との関係を密に築き、確立していきたいからです。私たちにとっての“本当の豊かさ”とは、そこにあると思っています。
またすべてのアイテムにはストーリーが欲しいとも思っています。私たちが好きな物には存在する理由があるのです。Firmamento各アイテムのストーリーは私たちがブランドを始めるときに掲げたエンブレム、もしくはアイデアに関わったものが多いです。他には生産プロセスや、コラボしているローカルたちと関連したものの場合も。それがブランドの個性となり、私たち自身にとって正直であり続ける唯一の方法なのです」

—Firmamentoの服作りの基本になっているというLa Barcelonetaのサーフシーン。それはどのようなものですか?

「La Barcelonetaはそもそも漁師地区です。来たことがある人なら、ここがとてもスペシャルな場所であることがわかるでしょう。伝統が愛されながらも同時に毎日何かしら新しい物事が発生している。その特異なキャラクターは私たちFirmamentoのアイテムに多くの影響を与えています。
そしてLa Barcelonetaのサーフシーン。できるときはいつでもサーフィン!そう、私たちのモチベーションは高いです。というのもバルセロナの波事情がそうさせます。実のところ、1年のうち少ししか波は立ちません。それも季節は大抵が冬、それも風の強い日。“サーフ可能”とは地中海では小さな波ですが、楽しむのには十分! (楽しまなければどうして続けることができる!?)
私たちはこのコンディションを避けて語ることはできません。そこからFirmamentoの“Surf Petit”、 “Amateur Surf”、 “Surf off” シリーズが生まれました」

—地元バルセロナ生産へのこだわりや、他ジャンルといえどもコラボレーションはローカルと。地域密着ゆえ、先の展望やその他にも制限が生じることもありえると思われますが、そこまで「メイド・イン・バルセロナ」にこだわるの理由は何ですか?
「まず私たちは独自の工場を持っておらず、アイテムごとに関連した先で生産しています。ですがすべて地元のメーカー。素材についてもバルセロナで作られた綿だったり、生地以外の例えば海洋ロープなどはLa Barcelonetaの老舗ショップから購入したり、その他の不織布も地元生産者によるものです。
Firmamentoを誕生させた当初からある地元生産、できる限りひとつひとつを手作業でという考えは不変です。サスティナブルでエシカル、それは私たちのありたい姿であり、私たちなのです」

フィルマメントのこだわり

 

—最後に日本のファンに一言お願いします。
「良い波! (※オリジナル回答のまま)」

 

■プチコラム
サーファーとして、2人に一問一答
【サーフィン歴は?】
(アントン)幼い頃、兄と一緒にウインドサーフィンを始めました。それからウインドサーフィン用のボードでサーフィンに挑戦したことを今でも覚えています。80年代のボードは全く役に立たなかった…(笑)。しかしそれでも楽しく、素晴らしいひとときでした。そこでサーフィンに対する情熱が着火しました。
(マーク)11年前、アントンは私に電話してきていきなりこう言った。
「おい、今からお前を迎えに行く。今日がお前にとって初サーフィンだ!」。
連れていかれたのは暴雨、強風が吹き荒れる海。悪天候のため空港も閉鎖に追い込まれるような日。それでも危険を意識することなく、海に入っていった私たち…。そのときはアントンを恨んだね(笑)! 今でもその初サーフィン(?)のときについた傷跡が足に残っているよ。

【ホームブレイクはどこ?】
(2人とも)La Barcelonetaのビーチブレイク

【最近の愛用ボードは?】
(アントン) Takayama scorpion.
(マーク) 9′ Custom Longboard Single Fin. Shaper: Pepe Neyra

【お気に入りサーフトリップ先を3つあげるとすれば?】
(2人とも)ボルトガル、モルディブ、カナリア島

【海から上がった後で真っ先に食べたくなるものは?】
(アントン)バジルパスタ
(マーク)リゾット

Written by Michiko Nagashima
Sun, 26 March, 2017