Vol.3 Reality of Surfer in France

Vol.3 Reality of Surfer in France

「平日の朝は子供を学校へ送りがてら出勤。夕方になれば仕事は終わるから、波次第でそれからサーフィンして帰宅。週末はもちろんサーフィン。ただし寒くなるこれからの時期はサーフィンだけじゃない。スノーボードも楽しめる。近場のスキー場なら車で2時間もかからず行けるから、午前中はピレネー山脈でスノーボードをし、午後はビアリッツに戻ってサーフィンを楽しむ。同じ日に場所と板を変えて遊ぶのも、ビアリッツサーファーの週末スタイルの一つ」。

そう教えてくれたのはビアリッツの街中でアパレル関連の店を営むマチューさん42歳。

「ビアリッツに住むサーファーはどんなライフスタイルを送っているのか? いつサーフィンをしているのか?」という問いに対しての答えである。

典型的なパターンを教えてくれたが、シンプルに答えると「仕事以外の時間に波があればいつでもサーフィン」するのがビアリッツサーファーのスタイルであるらしい。
アフター5サーフが可能なのは残業をしないフランス人らしいが、ときにはランチタイムまでサーフィンするらしい。

「お昼休憩が2時間あるからね。波があればランチを5分で済ませ海へ直行。昨日もそうだったよ。できるときにやっとかないと」。

ビアリッツは海と職場、職場と家、家と海、これらの移動距離はそれぞれ10分〜15分と近く、サーファーにとって有利な立地条件である。しかしそれを差し置いたとしても波があるときにサーフィンに行くことができる、許されるその環境は贅沢だ。

ビアリッツサーファー

ビアリッツサーファーのマチューさん。ビアリッツの街中でアパレル関連の店を営んでいる。

 

フランスでも40歳前後といえば当然家庭を持つ人が多い。いくら波次第の生活でも家族と過ごす時間、バランスはどう取っているのだろう? そもそもビアリッツに住む大人のサーファーとは、どんな人たちなのだろうか。

マチューさんとの会話は続く。

「そうだね、大きく3つのタイプに分けられると思う。1番多いのは生まれも育ちもビアリッツで、そのままここで仕事をして家庭を持つ人たち。2番目は他の場所や都市からの移住組。例えばパリからの移住組なんて、けっこういるね。都会で十分な稼ぎは得られる反面、その生活に嫌気が差し、子供を育てるなら自然や海のそばがいいと考える人が実行に移してやってくる。その場合、仕事はビアリッツで見つけたり起業したり。3番目はその都会での仕事をキープしながら、メインの住まいをビアリッツに移すタイプ。平日は都会で仕事をし、週末はビアリッツで過ごすいわゆるデュアルライフを送る人たち。週末しかサーフィンできないが、ビアリッツは小さな町で満足のいく仕事がなかなか見つからないというのも現実だからね」

ちなみにマチューさんは2番目の移住者タイプに当てはまる。子供は3人。この数は多めに入る。

「週末のサーフィンには子供も連れて行っちゃう。小さなサーフボード、子供用ウエットスーツを用意してサーフィンを一緒に楽しむ。まだ一人で乗れないから教えながら。その時間は自分の好きなことを子供に伝える、親子ならではのふれあいタイムでもある。……って言えばパートナーへの聞こえもいいでしょ♪」。

仕事も家庭も持ちながらサーフィンにかける時間も十分に取れ、さらにサーフィンと家族サービスも同時にこなしてしまう。マチューさんの場合は時間があるだけではなく、時間のやりくりも上手い。ある意味、プロの大人サーファー。

「フランス人の生活は仕事がメインではなく、趣味を楽しめる時間がある。そこは日本の人からするとフランス、そしてヨーロッパが憧れられる環境であるのはよくわかる」

こう言うマチューさん、実はこの1年以内に初めて日本へ出張で行き、そのときにちゃっかり? いやしっかり?かサーフィンをしてきた。

「湘南で入ったよ。波はビアリッツより小さく、人はビアリッツより多かったけど。でも雰囲気は湘南の方がいい。自分たちはあきらかに日本人ではないのに、肩身の狭い思いというかローカリズムは感じられなかった。むしろピースフルな雰囲気。ビアリッツの方が湘南に比べると海の中は殺伐としているよ。日本人の方がサーフィンにかけられる時間は少ないからその分貴重なはずなのに。おかしいな、我々♪」

ビアリッツの特徴として夏はバカンスで来る人が多く、また波自体も小さいのでローカリズムは強くないが、夏以外の時期は確かに海の中で見る顔は大抵同じだ。

それにはビアリッツの波のコンディションが影響していると思われる。
まず水温は年間を通して低い。カリフォルニアまでとはいかないが、日本の湘南よりは低く、ウエットスーツを脱げるのも真夏の2週間ほど。それでも朝晩は必要なときが多々ある。波も夏を過ぎると大きなうねりが届き始め、秋冬は楽しむというより修行の場になりうる。春になるとサイズは落ち着くがピレネー山脈からの雪解け水が流れ込み、その冷たさは想像以上! ゆえにビアリッツサーファーはタフな人が多く、フィジカル・メンタル両面でタフさを持ち合わせていないと続かない、そこに楽しみを見い出せないのだ。

ビアリッツサーファーたち

 

最後にビアリッツサーファーのキャラクターについてマチューさんが自身の考えを述べてくれた。

「フランス人は趣味にかける時間に恵まれている。でも趣味のないフランス人だってもちろんいる。そういう人は家にいて……何をしているのかな?(笑) でもビアリッツにいる人、わざわざ移住してきた人はサーフィンという趣味にかける情熱を持ち、その熱量も強い。年を重ねるごとに社会人として、家庭人としての責任は増えるけど、一方で若いマインドは保ったまま。きれいに言えば少年の心を持った大人、ってところかな。」

仕事も家庭もあり、サーフィンを楽しむ時間も持つ。ただビアリッツでのサーフィンはリラックス、メロウというよりスポーツ、ハードな面が強い。それを楽しみながらこなしていくのがビアリッツサーファーの今のようだ。

そう思えば海ではサーファーがよく何かしら愚痴っている姿を見るのは日常だが、みなどこか嬉しそうだ。

ここの人たちはエネルギーに溢れている。

Written by Michiko Nagashima
Sat, 05 November, 2016